作業工具の進化と真価 <1>

時代が変われど褪せぬ魅力を放つ作業工具。
その「進化と真価」を探るべく、作業工具メーカーの取材を行った。ともすれば「既に成熟したツール」とのイメージが付き纏う作業工具ではあるが、その実、動力を持たないシンプルさゆえにギミックによる誤魔化しが効かない実力勝負の業界でもある。そこで本特集では、作業工具の細部に宿る「ユーザーに選ばれる理由」をフィーチャー。各社の自信作をもとに、独自の進化を遂げたこだわりのポイントを紹介する。

【1】ロブテックス「J-CRAFTシリーズ」

エビ印が贈る「本当に良い工具」

「エビ印」ブランドが満を持して送り出した高品質工具シリーズ「J-CRAFT」。「つかむ」「曲げる」「切る」など工具の基本性能を追い求めて辿り着いたこだわりの日本品質工具で、ペンチ・ニッパを中心に35種類を展開。高い精度や鋭利な切れ味、手に馴染む質感といった工具の原点を徹底的に磨くことで、着々と市場での存在感を高めている。

その持ち味を一言で表すとすれば「数値では表せない使い心地」だ。担当者も「一度使えば必ず良さがわかる製品。展示会で実際に使っていただくと、触り心地や軽さ、切れ味…どれを取っても非常に好評です」と品質の高さを担保する。

中でも偏心構造により切れ味を高めた「パワーシリーズ」は同社の自信作。テコの原理により少ない力で太い線の切断が可能で、ピアノ線や硬鋼線が切れる「パワーペンチ」「パワーニッパ」、フラット刃による綺麗な切断面が魅力の「パワーニッパ薄刃」を展開している。

さらに、後付けで手軽に作業性を高められるJ-CRAFT専用アタッチメント「グリップアダプター」も開発。長時間作業を楽にする簡易式バネとしても、油で滑りやすい現場の落下防止グリップとしても使える同製品は市場でも高い評価を獲得(150サイズのみ対応)。10月の展示会「第11回ツールジャパン」では元々販売予定はなかったものの、要望に応え急遽販売したところ即完売したという。

【2】オーエッチ工業「足場屋ハンマー」

カラビナとの相性◎、片手で簡単脱着

「ここ数年で一番の売れ行き」というオーエッチ工業の自信作。人気の理由は、ヘッドにあけられた特徴的な形の大きな掛け穴にある。

高所作業向けのハンマーは腰のカラビナに掛けられるよう、ヘッドに掛け穴を設けたものが多い。しかし径が小さかったり単なる真っすぐな穴であることが多く、片手での脱着は難度が高いのが課題だった。そこで「足場屋ハンマー」の掛け穴は、他社を凌ぐ大きさ(φ15mmまでOK)で脱着に有利なすり鉢形状に。カラビナが穴に向かって滑ることで、ノールックかつ片手で素早く脱着できるストレスフリーなハンマーに仕上げた。

掛け穴の配置も工夫。ヘッドの中心からややズレた位置に穴を設けたことで、カラビナに掛けた際に柄が持ち手側に自然に傾く仕掛けを施している。これによりカラビナから直に握りやすく、外した後も持ち替えなしで叩くことが可能になった。

高所作業では落下につながるトラブルは厳禁。そこでパイプとヘッドの間に衝撃を受け止めるシャフトを圧入し、パイプを硬く粘り強いクロムモリブデン鋼にするなど折れづらくした。柄尻には落下防止コードを付けられるステンレスリング付き。足場職人の支持を受け、発売以来生産が追い付かない状況が続いている。

【3】TONE「ハンマーシリーズ」

展開と刷新、TONEのハンマーは新時代へ

TONEのハンマーが生まれ変わったのをご存知だろうか。同社はこのほど、ハンマーのラインアップをすべてリニューアル。従来は黒一色だったデザインを刷新し、コーポレートカラーの赤と黒を前面に推した鮮やかな見た目に作り変えた。

直線的だったグリップ部も一新。グリップはゴム、シャフトにはグラスファイバーを採用し、ラウンドした形状に変えることで握りやすく滑りにくい仕様にしている。さらにグリップの中央には同社のブランドロゴを配置。一目で「TONEのハンマー」であることがわかる象徴的なデザインとした。

「ハンマーのリニューアルは初めて」と担当者。「ハンマーは総合工具メーカーの看板を掲げるうえで必須のアイテム。当然取り揃えてはいたがそれを全て刷新し、ラインアップも拡充することで、新たな業種に裾野を広げ市場シェアを高めたい」と狙いを語る。

その言葉通り同社は、既存機種の刷新に合わせ「軟鉄ハンマー」「真鍮ハンマー」など、これまで取り揃えていなかった製品も複数投入。「ハンマーの新製品は今後も続々登場予定」(担当者)と、総合力にさらなる磨きをかける。

【4】エンジニア「ネジザウルス VA」

切る・回す・掴むの3役で電工を支援

頭が潰れて回せなくなった小ネジや錆びたネジを掴んで簡単に外すことができる「ネジザウルスシリーズ」。

そのラインアップに、電気工事士向けの「ネジザウルス VA」が加わった。

VA線(φ 2.6×3C)やCA線を片手でラクラク切れる高い切れ味が特長。刃を擦り合わせて切断するシャーリング刃により、切り口がきれいで銅線などの飛散も抑えられる。網目状のクロスハッチにより先端に隙がなく、結束バンドなどの薄モノを確実に把持。「従来のペンチのような空つかみがない」という。

もちろん、名前の通り錆ネジや潰れネジを簡単に外せるネジザウルス機能も搭載。ドライバー代わりに使うことで、配管やダクトの撤去時に専用ドライバーを取りに行く手間を省ける。CEスリーブやアースなどの簡易圧着機能も備え、まさに切る・回す・掴むの三拍子揃った万能工具だ。屋外の配管作業や高所での電設作業、リフォームなどに提案する。

作業工具の進化と真価 <2>につづく

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