進化する作業工具

機械化が指向されながらも、手作業が必要な現場は多くあります。働き方改革という点では、感覚が重視される作業工具こそ見直すべきツールといえます。

【画像1】=スーパーツールの「クイックワイドモンキレンチ」は、ウォームを下に引くことで素早い口開き調整ができます
【画像2】=TONEの差替式トルクレンチは、ヘッドを替えることで様々な作業環境に対応
【画像3】=前田シェルサービスは「コンポータンハンマー」の魅力を漫画でもアピールしています
【画像4】=ベッセルの「本締めボールポイントレンチ」は最大38度まで傾けても使用可能

機能集約で負担軽く、1丁であらゆる場所へ

作業工具の機能が集約されれば、持ち替える手間がなくなり、移動時や保管・管理の負担も軽くなります。すでに定番となったワイドモンキレンチもそういったニーズを反映された製品の一つです。口開きを大きくすることで、1丁で対応できるナットサイズを多くする。「大は小を兼ねる」発想ですが、欠点もあります。開きを調整するウォームの操作性です。

2020年8月にスーパーツールが発売した「クイックワイドモンキレンチ」は、ウォームを下に引くことで素早い口開きを可能にしました。技術開発部の林輝樹課長は「『もう少し大きければ』との声に応えた結果、『超ワイド』と言われるほど口開きがどんどん大きくなり、下あごの移動距離も長くなりました」と振り返りました。
「ラックとウォームのかみ合わせを外す」(林課長)という独自の早送り機構を採用。モンキレンチでこういった機構を採用するのは初めてとのことです。

TONEが「変身」と謳ってアピールしているのは差替式トルクレンチ。使用目的に合わせて交換することでトルク管理がしやすくなるだけでなく、ソケットが使えない狭い場所でも効果を発揮します。ヘッドは、ラチェットめがね、クイックスパナ、首振ラチェットを用意しました。なかでも、高さが低く、狭いところに向くクイックスパナヘッドは、ボルト・ナットに素早くアクセスできる点が受けているそうです。スパナ部の一部がスライドすることで、抜き差しせずに連続作業を可能にしました。

ヘッドの特注にも対応していますが、ユーザーのなかには「自前でヘッドを用意する」(営業企画部)ケースもあるといいます。通常の工具で、差替式トルクレンチ用のヘッドが使える変換アダプターも製品化しています。

素材の力で高まる耐久性と安全性

作業工具は、人の力が作用して役割を発揮します。繰り返し動かせば疲れ、力の入れ方次第で身体への負担も大きくなります。そういった課題を解決するために、少ない力で長時間の連続作業が可能な製品が注目されています。

前田シェルサービスの「コンポータンハンマー」は、持ち手形状の改良により疲労度を同社従来比で最大30%軽減しました。打撃面の形状も工夫することでスイートスポットを外しにくくしています。ヘッドが抜けたり、柄が折れたりしない一体成形工具。火花が発生せず、破砕もしない特殊ウレタンを採用しました。ヘッド内部に埋め込まれた特殊素材が打撃時に移動することで、反動を抑えてショックを和らげるのも特長です。

指の位置に合わせてグリップの凹凸を変更。使いやすさと疲労軽減を図った。高い耐久性と適度な硬度で傷付きにくく、打撃音も静か。プラスチックハンマーに比べて長寿命なのも売りだ。全長560mm以上のハンマーは、ヘッド上部が平らなため倒れない構造になっています。

メンテナンス、治具の組立、機器の整備などに使われる六角レンチのバリエーションも増えています。操作が限定されるため、先端を丸くして挿入しやすくした「ボールポイント」が発明されたものの、少し傾けて早回しができるようになった分、先端で折れるというデメリットが出てきました。そういった経緯を踏まえて、ベッセルが2019年2月に発売したのが「本締めボールポイントレンチ」です。

ボールポイントの形状は、ボール部が底あたりする形状ではなく、傾きによって駆動する部分が移動するようになっており、最大38度まで傾けられます。もう一つの特長がオリジナルの鋼材「EX合金鋼」を採用したこと。産業・建築用ビットに使われている鋼材を使用し、「自社内で徹底した品質管理のもと、性能が最大限出るように熱処理を行っている」といいます。

新型コロナウイルス拡大から、工場でも感染症対策の関心が高まっています。そこで留意されているのが共有の機器類。シフト制などで複数の作業者が一つの機器を使う場合も多く、企業には適切な消毒や使用者の把握が求められるからです。

フジ矢が開発した「抗菌シリーズ」は、グリップの材料に抗菌剤を混ぜることでグリップ表面の細菌の増殖を抑えました(殺菌・滅菌ではありません)。「新型コロナウイルスの影響で衛生意識が高まっている工場などでの作業に最適」といいます抗菌剤はまな板や三角コーナーですでに実績のあるものを採用。「剥がれる懸念のあるコーティングと違い、材料に直接抗菌剤を混ぜているので効果が長期間持続する」としています。

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