求められるマテハン機器
2024年問題の影響ジワリ、人件費高騰・人手不足にマテハンで対応
【画像1】タイトルイメージ
【画像2】ソーター・小型自動倉庫、AGV・AMR
【画像3】パレタイジング・ローディング
【画像4】AGF
【画像5】山金工業、アイコム
日本通運の平井物流センターで活用される「t-Sort」
4月1日、ついに働き方改革関連法がトラックドライバーにも適用された。いわゆる「物流の2024年問題」の影響が顕在化するとの懸念もあったが、昨年度には朝の情報番組などで話題となるなど業界を挙げた周知活動によって、今のところ大きな混乱はみられていない。
一方で、全日本トラック協会が公表するトラック調達のスポット価格の動向を示す成約運賃指数(年度)において、令和6年度は126.3と過去最高水準で推移しており、懸念されていた物流コストの上昇は免れていない。6月1日には国土交通省がトラックの標準的運賃の水準を8%引き上げたことからもこの流れは止められそうにない。
運賃引き上げ=トラックドライバーの賃金上昇=人手不足解消による好循環とも考えられそうだが、実態は「人件費上昇による収益悪化」などを理由に24年上期の道路貨物運送業者の倒産件数は186件(前年同期比39.8%増)と4年連続で増加(帝国データバンクの「道路貨物運送」倒産動向から)。09年に次ぐ高い水準となっており、2024年問題関連の影響がジワリと出始めている。
現状、荷主企業による2024年問題への主な対応は、受け入れた物流コストの増加分の製品販売価格への転嫁であるが、今後更にドライバー不足が深刻化すると更なる対策が求められる。昨年は各所で「2024年問題は2024年4月で終わりではない。そこから深刻化していく問題だ」と聞いたが、まさにそうした状況が生まれつつある。
人件費高騰はドライバーだけの問題ではなく、倉庫内で働く作業者の人件費も上昇している。人手不足と相まって現場では頭の痛い問題となっている。そうした中で求められているのが自動化・省力化・高生産性を適える物流マテハン機器であり、本特集では今求められているマテハン機器を紹介する。
【ソーター・小型自動倉庫】
柔軟なロボ式仕分け機で物流危機に対応
波動処理に自動倉庫活用も
2024年問題の影響で運送会社から出荷ルールにもメスが入っている。特に出荷締切時間の前倒しは深刻で、「これまで6時集荷である程度融通が利いたにも関わらず、1〜2時間程度の前倒しと時間厳守を求められるようになった」(荷主企業)といった声もある。一方で、当日・翌日配送に慣れた荷受け先からの配送に求められる品質は高く、誤配送や配送遅延には厳しい目が注がれている。
そうした中で、人の手を極力介さない自動化機器が求められているが、特に出荷締切時間に間に合わせつつギリギリまで当日受注分を処理するためには、人手による仕分けやピッキングからソーターや自動倉庫への転換が重要になる。しかし、都市部のスペースが限られた物流拠点では、従来型の重厚長大なシステムの導入が難しかった。
柔軟で小型なシステムが求められるなか、国内で140拠点以上、4800台以上のロボットを納入している+Automationが提供する仕分けロボット「t-Sort」は、床置きのパレットや架台の上に走行用マットを敷き、マットの上に小型AGVや投入シュートを設置すれば運用可能な柔軟性の高い仕分け装置。最短1日で導入・始動可能で、設置面積も従来のソーターの約3分の1から2分の1程度に抑えることができる。取り扱い品目もA5サイズからオリコン20〜70リットルまで対応。契約方法もいつでも解約・プラン変更可能なサブスクリプション方式を用意するなど、仕分け作業の自動化の第一歩として定評がある。
省スペースかつ高速処理が必要な場合は、立体型ソーターが適している。Gaussyの倉庫ロボットサービス・Robowareが提供する立体型仕分けロボット「OmniSorter」は、平面型ソーターに比べて仕分けスペースを省スペース化できる。宛先100件を幅8.1×奥行3.4mの10坪程度で導入可能なのが大きな特徴。処理能力も毎時1200〜1400ピックとロボット式ソーターの中では高い。
■自動倉庫も小型化
荷待ちを起こさないためには庫内物流をいかに整流化した状態を保つかが重要だが、季節・時間波動による繁閑が起きてしまうのが物流現場だ。そうした波の抑制に活用できるのが自動倉庫。従来は大型な物しかなかったが、近年は小型かつ高速処理可能な製品が現れてきている。
機体上部にバッファエリアを設けることで約5坪に300以上の仕分け間口数を確保できる「ナノ・ソーター」を手掛けるROMSは、100〜300㎡ほどの限られた空間でも高密度・高性能処理可能な自動倉庫「NFC(Nano-Fulfillment Center)」を用意する。搬送方式にはシャトルやAGVもラインナップするが、標準仕様は処理能力とコストバランスの良いスタッカークレーン方式を採用する。
「小型なため考えずに運用すると処理能力を超えて身動きが取れなくなってしまう。アルゴリズムの調整や回避プログラムを構築することで全体の信頼性を高めている」(同社担当者)
ROMSの小型自動倉庫「NFC(Nano-Fulfillment Center)」
通貨処理機の世界最大手のグローリーも2017年に立ち上げたロボットSIer事業でバケット式小型自動倉庫を手掛ける。幅・高さともに最小2mから設置可能で、コンテナサイズや設置スペースに合わせた装置形状のカスタマイズにも柔軟に対応する。協働ロボットを活用した搬送にも強みを持ち、前後の物流工程も含めて自動化できる。
【AGV・AMR】
国内メーカー多士済々
昇降設備連携で多層階運用も
矢野経済研究所が昨年9月に発表した調査によると、2024年のAGV・AMR世界市場は、3000億円規模だった21年の約2倍の6404億円になると見る。各国でAGV・AMRの生産や導入に対する支援が継続していることなどもあり、2桁成長は続き26年には9000億円を超えると予測する。
日本市場も設備投資が旺盛で、中国をはじめとする海外勢の参入も本格化している。しかし、そうした中で国内メーカーによるジャストフィットな製品にも注目が集まっている。中小企業の集合体・エムジーホールディングス傘下のGEクリエイティブも導入しやすいAMRを昨年から提案。市場からの注目を集めている。操作の簡易さを突き詰めた牽引型の「AMRキャリ太郎」は「導入の敷居を極限まで下げ切ったAMR」(同社担当者)で、操作は物理ボタンで機器連携は前提としない誰でも使える簡易なインターフェースが特徴。食品製造分野などこれまで自動化に及び腰だった分野からの問い合わせも多いという。
GEクリエイティブのAMRキャリ太郎
福岡発のロボットベンチャーの匠も純国産にこだわったAGV・AMRの開発、製造を手掛ける。FIGグループと提携を結ぶことで、量産体制の整備から運行制御などのサービスも含めてワンストップで提供できる体制を敷く。海外勢の多い市場で、柔軟でスピーディーな体制が安心感を醸成し、「自動車メーカーはじめ大手顧客が多い」(同社担当者)という。
■進む多層階運用
日本にある工場や倉庫が海外と大きく異なる点の一つは多層階の建物が多いことだ。平面移動を得意とするAGV・AMRだが、階をまたいだ立体的な運用には向かなかった。そんな中、エレベーターや昇降機と連携して多層階での活用を目指す取り組みが進行しつつある。
国産の搬送ロボットを手掛けるLexxPlussの「LexxHub」は、エレベーターなどのPLC制御機器と有線接続することで既存設備をネットワークに接続。同社のAGVとAMRのハイブリッド搬送ロボット「Lexx500」と直接連携できるIoTソリューション。Lexx500の動きに合わせてエレベーターを呼び出すなどの協調作業が簡単に行えるようになる。エレベーターの場合、従業員の呼び出しボタンによる信号と、LexxHubからの指示信号が同じ仕組みとなっているため、不具合が発生しづらい安心設計。
LexxPlussのハイブリッド搬送ロボット「Lexx500」
昇降機器側からの提案もある。垂直搬送機を手掛ける鈴木製機は、AGV・AMRとの連携を強化している。AGVリフターは同社のトレーリフターをベースに様々な無人搬送台車と連携できるもの。トレーリフターはパレットやかご台車を載せたカゴ(トレー)自体がリフト内に入って昇降するため、様々な荷姿の物を運べる利点がある。加えて、AGV・AMRとエレベーター連携には扉の隙間が問題となるケースが多々あるが、トレーリフターにはその心配がない。
「既存のエレベーターとの連携はメーカーから断られる場合や改修に数千万円かかったケースもあると聞く。トレーリフターは構造がシンプルなので、簡単に改修でき導入コストも抑えられる」(同社担当者)
鈴木製機のAGVリフター活用イメージ
【パレタイジング・ローディング】
協働ロボットの活用も
トラックローダーで荷待ち時間削減
2024年問題で問題視されているトラックドライバー不足の解消に向けて最も即効性があるとされるのが、ドライバーの荷待ち時間の削減だ。現在1運行あたり3時間程度の荷待ち・荷役作業などが発生しているとされているが、政府はそれを2時間以内に収めることを指針としており、達成企業に対してもさらなる削減を求めている。
構内の整流化にバース予約システムなどのソフトウェアの活用が進んでいるが、高いトラックへの積載効率と庫内作業の効率化を両立するパレタイジングシステムにも注目が集まっている。
Mujinのロボットパレタイザー「MujinRobotパレタイザー」は、混載や複数什器への対応をロボット知能化技術「MujinMI」によってロボットが自律的に「見て・考えて・取って・置く」ことができる。主に垂直多関節ロボットと荷姿に応じてカスタマイズ可能なMujinハンド、視覚を担うMujinビジョン3D、それらを統合制御するMujinコントローラーからなる。Mujinコントローラーが前後工程の自動化機器とも連携するため、複雑な工程を組んでも臨機応変に対応する。
Mujinのロボットパレタイザー
近年増えているのが協働ロボットを活用したシステム。可搬重量が向上したことや人と共に作業できることなどを理由にロボットの未実装分野でも採用が進む。
オークラ輸送機は1984年にパレタイジングシステム第1号機を投入して以降、これまでに8000台以上のロボットパレタイザーを納入してきた。今年6月に協働ロボット大手のユニバーサルロボット(UR)と披露したパレタイジングロボットシステム「EasyPAL(イージーパル)」は、同社の長年のノウハウが詰まったティーチング支援システム「OXPA-Qm」とURの20㌔可搬の協働ロボット「UR20」を組み合わせたもの。PC上で積付け製品のデータを入力すると、1000以上ある標準積付けパターン(パターン追加も可能)から適したパターンを提示。選択したデータをロボットに送信するだけで稼働でき、積付けパターンの変更も即座に行える。食品業界など自動化・ロボット化が十分ではない分野でも、「パレタイジングや協働ロボットといった言葉を知らない人でも簡単に使える。既に引き合いもある」(同社担当者)という。