建設需要と設備投資〜メーカーに聞く

鉄骨に代表される大型構造物に向けた提案をダイヘンの溶接・接合事業部長に就任した田中良平氏に、作業着やユニフォームを手がける伊藤崇行社長に建設現場向け提案を聞いた。

【画像1】左:ダイヘン 溶接・接合事業部長 田中 良平 氏 右:アイトス 社長 伊藤 崇行 氏
【画像2】ダイヘン:高能率アーク溶接システム「D-Arc」(半自動仕様/写真上)
【画像3】CO2・MAG・MIG溶接用中継フィーダシステム「デジタルらくらくフィーダ」
【画像4】アイトス:遮熱シェード付き空調服TM

ダイヘン〜大型構造物の溶接を短時間で

溶接・接合事業部長 田中 良平 氏

 多層盛が当たり前だった厚板溶接を1〜2パスで仕上げる。20kg以上あるワイヤ送給装置を事あるごとに持ち運ぶ必要がない。いずれも、鉄骨に代表される大型構造物に向けた提案だ。ダイヘンの溶接・接合事業部長に就任した田中良平氏は、共通するキーワードとして「働き方改革」を挙げた。

 ——最大厚さ19mmの厚板を短時間で溶接する高能率アーク溶接システム「D-Arc」を市場投入して5年が経ちました。
 「鉄骨、橋梁、建機など、国内外で数百台の実績があります。6パス必要だった多層盛をたった1パスで済ませられるのは、『埋もれアーク』を安定化させる技術を開発したからです。高電流のアーク力によって、溶融金属中にワイヤが潜り込み、アークを発生させる。そうすることで、母材の奥深くが加熱され、深い溶込みが得られます」


 ——2018年に発売した半自動仕様が販売の大きな弾みになりました。
 「大型構造物の溶接を自動化するには、コストや検証に時間を要すため、ロボットシステムや専用機と連携させる自動仕様の導入には慎重にならざる得ない。だからこそ半自動仕様が売れたとも言えます。当社としては、半自動で効果を実感していただいた後、生産ラインの自動化を提案する。そういったストーリーを描いています」

 ——パス数が減ることで作業時間短縮につながりそうです。
 「『厚板』の溶接と言えば多層盛が一般的で、パス数が半分に減るだけでも大幅に効率が上がります。さらにスパッタや熱歪みが減少できるので、後処理の工数が少なくなる。鉄骨加工のように急な納品を求められた場合でも、残業時間を減らせます」


 ——今年、建築技術性能証明を取得しました。
 「『JASS6』(建築工事標準仕様書)の適用は、当社にとって念願でした。入熱制限や開先形状が規定されていることから、D-Arcが適用できるのか判断できず、導入に踏み込めないケースがあったからです。国内で周知活動を進める一方、欧州では風力発電関連の認証取得に向けて準備しているところです」

■取り回しを楽に

 ——大型構造物向けとして「デジタルらくらくフィーダ」を開発しました。
 「名前のとおり、ワイヤ送給を楽にできる製品です。溶接電源から最長で58m離れた先でも溶接ができます。通常の溶接トーチだけ使った場合に比べて、作業範囲を6倍まで広げられます。送給装置は、ワイヤも含めて20kg以上あるので、溶接箇所が変わるごとに持ち運ぶのは身体的な負担になります。大型構造物の溶接は、1階から2階に上がるような『縦の動き』『立体的な動き』が多いので、らくらくフィーダが効果を発揮するはずです」
 「12mのトーチケーブルでも高いシールド性能と安定したワイヤ送給を実現する『デジタルらくらくトーチ』も好評です。アルミ溶接向けとして、米国ではトレーラーやトレジャーボートの製造現場にも使われています。こういった製品は、いずれも『働き方改革』を切り口に提案を強めています」

 ——ただコロナ禍で実感してもらう機会が減っています。
 「商談展示会が中止されているうえに、依然としてお客様の現場に足を運びにくいのは確かです。この状況をいつまでも言い訳にせず、オンラインで興味を持っていただき、実演依頼につなげる仕組みづくりを進めています。販売店様にD-Arc(半自動仕様)をお客様の現場まで持ち込んでいただき、オンラインで当社が使い方を説明することも視野に入れています。大型構造物の溶接に対する訴求点を見出し、国内外の成功モデルを横展開させていきたいと考えています」

アイトス〜働く人の安全、快適をユニフォームで

アイトス 社長 伊藤 崇行氏

 アイトス(大阪市中央区)は、総合ユニフォームメーカーとして、働く人が安全・快適に働ける作業着やユニフォームを手がけている。今回は伊藤崇行社長に建設現場向け提案をメインに話を聞いた。

 ——改めて貴社の事業内容を教えてください。
 「当社は1917(大正6)年に作業着の卸問屋として創業しました。その後、自社で開発・生産も行うようになり、総合ユニフォームメーカーとして、建設現場、工場、飲食店や病院など働く人々のユニフォームを幅広く手がけています。最近は、仕事が休みの日も着ていただけるブルゾンなどのカジュアルウェアも扱っています。働く人の仕事服から休みの日のウェアまで取り揃えています」

 ——そのラインナップの豊富さが社名「アイトス」(AITOZ)に表現されています。
 「創業者の伊藤(ITO)をアルファベットのAとZで挟みました。AからZまで、働く人が身につけるすべての製品を提供する会社を目指すという意味が込められています」
 -製品開発をするうえで一番こだわられている点は何ですか。
 「着る人の声を反映することです。現場で着てもらいやすい、選んでもらいやすい製品づくりを心掛けています。今ではデジタル化も進みつつありますが、建設現場では野帳を収納できる大き目のポケットが重宝されます。工場ではラインごとに作業着の配色を変えたいという要望があるため、カラーバリエーションを豊富に展開しています。そういった業界の特性や要望を反映した製品開発が当社の強みです。全業界に共通していることは、作業の負担にならないような動きやすさや快適な着心地です」

 ——動きやすさというと昨年、クラボウと共同開発されている「ムービンカット」の最新モデルを発表されました。
 「クラボウの特許技術『ムービンカット』を用いた立体裁断パターンを採用したワーキングウェアを2000年より展開しています。着やすさ、動きやすさといった機能面において高い評価をいただいており、販売累計は800万着を超えます。昨年発売した最新モデルは、新たなムービンカットの立体裁断パターンを取り入れることで、肩や肘の可動域が広くなり、腕が動きやすくなりました。一般的な裁断パターンのワーキングウェアに比べ、着やすさ、動きやすさに優位性があるとデータでも立証されています」

■ フルハーネス対応空調服

 ——フルハーネスタイプの墜落制止用器具の着用が義務化されるにあたり、フルハーネス対応のファン付き空調服を開発されました。
 「作業者の安全を考えると、フルハーネスは着用していることが目視で確認できるよう、一番上につける必要があります。しかし、空調服の上にフルハーネスを着用すると、ハーネスの締め付けにより、襟元から抜ける空気の量が激減します。空気が循環しないと空調服内に熱がこもり、涼しさを感じることができません。そこで、空調服の背中部分に装着するスペーサーパッドを開発しました。スペーサーパッドで空気の道をつくることで、熱を逃がします」
 「建設現場ではヘルメットの中に熱がこもるという声も多いです。そこで、『遮熱シェード付き空調服TM』(画像右)を発売しました。遮断シェードをヘルメットに引っかけることで頭部まで風が通り、ヘルメット内の熱さを解消できます。こちらもフルハーネス対応で、高所作業でも安全に着用いただけます」

 ——熱中症対策として「アイスベスト」が建設業をはじめ、幅広い業界で受け入れられていると聞きます。
 「ベストの脇下と背中の部分にあるポケットにアイスパックを収納し、身体を冷やせるのが特長です。身体にフィットするデザインや、通気性と伸縮性に優れるパワーメッシュ素材を採用するなど、作業着メーカーならではの視点を取り入れています。屋外作業はもちろんですが、屋内での活用事例も多いです。自動車の組み立てラインなどでは、ボディに傷がついてしまう恐れがあるため、ファン付き空調服は使用できない現場があります。しかし、アイスベストはインナータイプのため、そういった心配なく着用いただけます」
 「大きな工場や倉庫では、空調の設定温度を1℃変えるだけで経費を大幅に削減できるという話もあります。アイスベストなどを着用いただけば、設定温度を1℃上げられるでしょう。経費だけでなくCO2削減といった環境配慮にもつながります。こうした服+αの提案も今後は強化していきます」

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