気候変動時代の酷暑対策

日本の夏が耐え難い暑さになってきた。軒下に吊るした風鈴で夏を凌げたのは昔の話。気温、湿度ともに高い日本の酷暑を乗り切るには、今や暑さ対策製品が必須だ。もちろん工場などの生産現場でも、労働安全や生産性の点から対策は欠かせないものといえる。今夏、注目の暑気対策ソリューションを紹介する。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】4月、5月 夏日日数の比較グラフ
【画像3】製品紹介:有光工業・鎌倉製作所
【画像4】製品紹介:スイデン・ダイキン工業
【画像5】製品紹介:山真製鋸・山善

日本の夏が年々暑く、長くなっている―そう感じる向きは多いと思われるが、そうした肌感覚は実際のところ、決して間違いではない。

気象庁によると、6〜8月の平均気温は100年あたり1.16℃の割合で上昇しているという。気温が上昇しはじめるタイミングも早く、4、5月に夏日(最高気温25℃以上)を観測する日数も増加。東京を例に取ると、1952〜61年の10年間と2012~21年の10年間の夏日の積算を比べたところ、73日から186日とおよそ2.5倍に増加(日本気象協会調べ)。大阪でもおよそ1.5倍となるなど、近ごろ「日本から春が消えた」と言われるのも頷ける結果だ。いずれにせよ日本の夏は全国的に長く、そして暑くなる傾向にある。

そうした気候変動の時代にあって、製造や建設などの各現場における暑さ対策はもはや必須のものといえる。特に熱中症は初夏や梅雨明けなど体が暑さに慣れていない時期に多発するため、早めの対策が肝要だ。本格的な夏の到来の前にできる熱中症対策としては暑さに強い体作りがあるが、そのためには体を暑さに慣らす「暑熱順化」が重要になる。

(一財)日本気象協会によると、暑熱順化には個人差もあるものの、数日から2週間程度かかるという。4~5月に軽い運動や入浴で意識的に適度な範囲の汗をかき、本格的な暑さに備えた体作りを行うことで、熱中症のリスク低減につながる。体を動かす機会や熱がこもる環境の多い製造現場でも、こうした対策を十分に講じたうえで、現場に適した暑さ対策ソリューションを導入したいところだ。

今年の夏は厳しい暑さ?

今年の6〜8月は日本付近で上空の偏西風が北を流れやすく、大陸のチベット高気圧や太平洋高気圧の勢力が強まるため全国的に暖かい空気に覆われやすいという。平均気温は平年より高いところが多い見込みで、夏は厳しい暑さとなる予測だ。

久々の冷夏だった昨年と同じ感覚で対策を打ったのでは、今年の夏は乗り切れないかもしれない―そうした目線で、本特集で紹介する各社各様の暑気対策製品をご覧いただければ幸いだ。そして、自社の現場に適した対策を施し、夏を乗り切ってほしい。



〜暑さ対策に! おすすめ製品の紹介〜

【有光工業】ポータブル細霧システム「TEM-01」

気化熱で省エネクールダウン

扇風機との「合わせワザ」で視覚的にも涼しい

空気中に噴霧した微細なミストの力で、暑さを和らげる。気化熱という自然現象を利用した暑さ対策を提案するのが、有光工業だ。

同社が扱うのは、ミクロの霧を噴射して対象エリアをクールダウンする細霧システム。なかでも「TEM-01」は、手軽に持ち運びできるポータブルタイプだ。元々は畜舎での使用を想定して開発されたという同システムの特長は、圧倒的なランニングコストの安さ。小型ポンプを動かすだけで稼働できるため電気代が安く、ノズルを最大10個まで取り付けて使用できる。畜舎を想像いただければわかるとおり、開放的な空間や大空間でもクールダウンが可能だ。

冷たい風を生み出すわけではなく、あくまで気化熱を利用。担当者は「エアコンほどの冷却効果はないが…」と前置きして言葉を続ける。「天井の高い大型工場など、エアコンが効きにくい現場でお役に立てる。視覚的にも涼しく、福利厚生の一環として半屋外の休憩エリアなどに使っていただくのも効果的。要は適材適所で、開放的な空間など刺さる現場には深く刺さる製品」(推進部推進課)

冷房以外に、防塵対策としても活躍する同製品。使用中のファンに取り付ければ、風との相乗効果で高い冷却効果を発揮できる。開放的な空間の暑さ対策にお悩みの事業者は要チェックだ。



【鎌倉製作所】 フォークリフト用クーラー「COOLEX-V152」

運転者を冷える座面で冷却、防塵タイプ登場

小型チラーでつくった冷水を座席に設置した冷却シートに循環させ、体を効果的に冷やす

換気が効かず、汗も蒸発できない厳しい「酷暑」現場。そんな過酷な環境で走行するフォークリフトの運転者は、常に熱中症の危険と隣り合わせだ。そんな運転者を冷える座面で直接クールダウンすべく、鎌倉製作所が提案するのがフォークリフト用クーラー。好評を博す同製品だが、今夏に向けて新たに防塵タイプ「COOLEX-V152」も発売される。

搭載したフォーク専用チラーには、独自に開発した振動対策を実装(振動・衝撃試験:MIL-STD-810適合)。小型チラーで生成した冷水を座席に設置した冷却シートに循環し、「冷える座面」で熱がこもりやすい背中・尻・太もも裏をダイレクトに冷却する。45℃までの酷暑環境に対応し、外気風の影響を受けることなく走行中にも確実な冷却機能を発揮できるという。

防塵性能もしっかりと担保。IP55等級を満たし、鉄鋼工場や屋外作業など粉塵や砂ぼこりが発生する厳しい環境下でも使用できる。防塵性能が必要ない場合、価格を抑えた標準タイプも選べる。体を直接冷やすシンプルな発想で、酷暑の現場にベストな解決策をもたらす。



【スイデン】超小型スポットエアコン「ハンディークーラー」

片手で運べるパワフル冷房

8.4kgと片手で持ち運べる重さのハンディークーラー

「後発商品とはなりましたが、売れ行きは昨年の発売から一貫して好調です」。スイデンの川合雄一営業本部本部長がそう言って推すのが、重さ8.4㌔の超小型スポットエアコン「ハンディ―クーラー」だ。

性能もさることながら、市場の支持を得た大きな理由はカラーリングにあるという。オレンジのイメージが強い同社では珍しく、白とモスグリーンの2色を展開。特にモスグリーンが好評で、アウトドアやDIY向けの販売が伸びている。ユーチューバーとのコラボで、大きな反響も得た。

冷房能力は0.39kWと、片手で持ち運べる工具箱のようなサイズ感ながら性能はパワフル。溶接現場でヒュームの飛散を防ぎつつ環境改善するなど、プロの現場でも活躍している。本体の前方に冷風用、後方に排気用の吸込口を設けることで周囲の熱を取り込みにくい構造に。これによって例えば冷風口をテント内に、排気口を外に向けることでルームエアコンのような使い方も可能にした。

さらに同社は今夏、防水規格IPX4のスポットエアコン「防雨型クールスイファン」も発売。使用できる温度帯が18℃~45℃と幅広く、屋外を中心にさまざまなシーンに対応する。水に強いハードゴムキャスターを採用するなど、足元にも雨対策を徹底。屋外の熱中症対策に向け、提案の幅を広げている。



【ダイキン工業】工場向けエアコン「MULTI CUBE」(マルチキューブ)

大空間でも1人ひとりを快適に

工場などの大空間でも個々人にあわせた温度調節が可能なマルチキューブ

工場をはじめとする大空間では、一般的にビルやオフィスと比べて空調の導入が難しい。特に、各人ごとに快適な温度調節を行うことは至難のワザだ。

大空間の1人ひとりを快適に。ダイキン工業の工場向けエアコン「MULTI CUBE」(マルチキューブ)は、そんな発想から生まれたソリューションだ。1台ごとに温度や風量の設定、ON/OFF制御ができるため、個々人の感じ方に適した暑さ対策が可能。大型プロペラファンで、最大19㎥/分の風量を作業者のもとに届ける。ダクト工事不要のため、据付や移設にも手間がかからない。

一方、「設備用エアコンベルトレスタイプ」には省工事形のクリーンルーム仕様が加わっている。低圧損で耐久性に優れるフッ素樹脂ろ材のHEPAフィルターを搭載し、捕集率99.99%を実現。清浄度が求められるクリーンルーム空調を、ダクト設計不要で手軽に導入できる。



【山真製鋸】ICEG(アイスジー)

着けるだけで首元を爽快冷却

首に着けるだけで手軽に使えるアイスジー

「マジ冷えるぜ‼」と迫真の表情でこちらを見る男性。昨夏発売の冷却グッズ「ICEG(アイスジー)」のパッケージを見ると、思わずその機能を試してみたくなる。

製品に用いたのは植物性の「PCM」と呼ばれる冷却素材。アメリカ航空宇宙局が宇宙飛行士を急激な温度変化から守るために研究開発したという素材で、普段は液体だが、22℃以下の気温や水に置いておくと冷却固体に変貌を遂げる。

これを首に巻き付けるように装着することで、周囲の温度が上がっても熱を吸収。外気温25~35℃の場合、約90~120分(3.0mmタイプの場合3.5~4時間)のあいだ一定の温度を維持できる。保冷剤と違って冷えすぎることもなく、手軽に繰り返しひんやり感を味わえる。さらに早く冷やしたい場合は、「スリム軽量2.0mmタイプ」なら約5℃の氷水でおよそ15分、冷凍庫ではおよそ30分でスピーディに冷却固体化することも可能だ。

アイスジーの使い方は実にさまざま。屋外での作業はもちろん、ワイシャツの中にすっぽりと収まる形状のためクールビズでの使用もOKだ。2個を重ねて装着し、冷感をさらに上げることも可能。カーエアコンで冷やす、クーラーBOXで冷やすなど冷やし方も柔軟性が高い。

暑さ対策で重要となる首元を、手軽に冷やせるアイスジー。様々なカラーを展開しているほか、スリムで軽量な2.0mmタイプや長時間使える3.0mmタイプなど豊富なラインナップをそろえている。



【山善】水冷式ウェア「DIRECT COOL」

氷で冷やした水でダイレクト冷却

通常の氷も使用可能だが、凍らせたペットボトルのほうが効果が持続する

山善が提案する新発売の水冷式ウエア「DIRECT COOL」シリーズ。凍らせたペットボトルで冷やした水を、専用のリチウムイオンバッテリーを用いた小型電動ポンプで循環させることで、体をダイレクトに冷やす仕組みだ。

夏場にはいわゆる「空調服」(電動ファン付きウエア)が活躍するが、炎天下ではファンから熱風を取り込んでしまったり、塗装現場の粉塵を吸い込んでしまうなど環境によっては十分な効果を発揮できない場合があった。その点、DIRECT COOLなら粉塵が舞う環境でも使用可能。上から防護服を着用できるなど、環境に左右されることなく暑さに対抗できる。

凍らせたペットボトルは溶けにくく、冷却効果も長持ち。一度効果が弱まっても、ペットボトルを交換するだけで手軽にパワフルな冷却性能を取り戻せる。一般仕様の「DC-B01」のほか、専用タンクを保冷バッグで覆い、氷をより長持ちさせられるプロ仕様の「DC-B02」もラインナップ。レジャーや現場作業時の手軽な熱中症対策として重宝しそうだ。

(日本物流新聞 2022年4月25日号掲載)

関連記事

mt:ContentLabel>サムネイル

最新CAD/CAMが導く劇的「生産性向上」

近年、3DCAD/CAMによる設計が急速に拡大している。加工データの3D作成は、...

mt:ContentLabel>サムネイル

まだ高まる鍛圧機械の生産性

生産設備にIoT、AIなどのデジタル技術が活用され、生産性のさらなる向上に期待が...

mt:ContentLabel>サムネイル

山形カシオ×ハイオス「Made in Japan貫く」

さくらんぼや西洋ナシ、アケビなどの果物収穫量で全国一を誇り、すべての市町村に温泉...

mt:ContentLabel>サムネイル

工場環境向上のすすめ

少子高齢化の最前線をひた走る日本。中長期的な生産年齢人口の大幅減少が見込まれるな...