BtoBから実現する脱炭素社会への貢献

世界が 2050年の脱炭素社会を目指す中で、製造業の脱炭素への方針転換が強く求められている。

世界が 2050年の脱炭素社会を目指す中で、製造業の脱炭素への方針転換が強く求められている。特に昨今ではサプライチェーン全体でのカーボンオフセットを目指す動きも見られ、個社の取り組みが事業存続に大きな影響を与えると見られている。こうした潮流の中、モノづくりの現場が実現可能な脱炭素への道筋を探ってみた。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】生産設備のおける再エネ導入も進んでいる
【画像3】FEMSの適用範囲(〈一社〉日本電機工業会「FEMS導入の手引き」より)

生産設備のおける再エネ導入も進んでいる

全産業における製造業のCO2排出量の割合は約25%を占め、世界が脱炭素社会に向かう中で、製造業にはよりいっそうの環境配慮が求められている。

世界でもサプライチェーン全体の排出削減を推進する動きがより活発化へ向かっている。例として挙げられるのが自動車に関するLCA(ライフサイクル・アセスメント)規制。従来は燃費や走行時のCO2排出といった「車が走っているときの環境負荷」に対する規制がメインだった。これに対しLCA規制は「車の原材料製造から廃棄に至るまでの環境負荷」に拡大している。欧州各国では、2024年以降にこのLCAに基づいた自動車規制を導入する機運が高まっている。

こうした動きに対し、ドイツのダイムラーグループは、将来のLCA規制導入を見据え、自動車部品や素材製造時のCO2削減に向け、サプライヤーにカーボンニュートラル実現を求めるとともに、2039年までに未達の場合、取引先から除外することを発表した。他にもアップルやグーグル、ユニリーバといった企業も、サプライヤーへカーボンニュートラルへの対応を求めている。わが国でもトヨタやセイコーエプソンといった大企業がサプライヤーに対し、具体的な目標を提示して温室効果ガスの削減を促している。

製造業が環境に与える負荷で最も大きいのは電力消費によるCO2排出。一般的な工場の電気使用量のうち多くが生産設備であり、カーボンニュートラルを達成するには、カーボンフリーの電力活用と生産設備の省エネルギー化が必須だ。

しかし、昨今のエネルギー価格の上昇の影響で電力料金は上昇の一途を辿っており、割高な再生可能エネルギー由来の電力導入は、生産コストへの影響が少なからず懸念される。とはいえ、企業規模の大小にかかわらず、脱炭素への取り組みはもはや「待ったなし」の情勢でもある。

現状、最も効果的な施策は生産設備の省エネルギー化と生産の高効率化だろう。近年の世界的な脱炭素化への流れを受け、各メーカーはより省エネルギーで、生産効率の高い製品を市場に投入している。こうした設備の積極的な導入の積み重ねこそが、製造業における脱炭素化に大きな変化をもたらす。

政府も事業者のさらなる省エネ設備への入替を促進するため、「先進設備・システム」、「オーダーメイド型設備」の導入を支援している。特に高効率空調や産業用ヒートポンプ、冷凍・冷蔵設備、工作機械、ダイカストマシンなどの汎用的な設備については、簡易な手続きで申請可能な申請区分(指定設備導入事業)も用意している。

生産設備の現状把握が不可欠

企業におけるカーボンニュートラル達成への取り組みは、常に費用対効果のバランスを確認しながら進めなければならない。エネルギーが使用されている工程や場所、エネルギーの使用状況を把握し、省エネできる項目を洗い出して各項目への取り組みを検討する必要がある。

その過程で有効なのがFEMS(工場エネルギーのトータル監視システム)の導入だ。FEMSは、工場の受配電設備・生産設備のエネルギー管理・使用状況の把握・機器の制御を行うもので、導入により機器の不必要な稼働やエネルギーを過大に消費している機器を特定できる。また、余計に消費されているエネルギーを抑制したり、他の機器のエネルギーに回したりといったことや、エネルギーの使用状況を数値やグラフなどで見える化でき、エネルギー原単位(単位エネルギー使用量に対するエネルギーの使用量)の算出なども行える。既存設備の稼働状況の把握や、省エネ設備への転換検討など生産拠点を俯瞰的に捉えることができ、最適な脱炭素化の推進に寄与するシステムでもある。

こうしたシステム導入は効果こそ高いものの、大企業はともかく中小企業にとっては大きな負担となる。そこで活用して頂きたいのが経済産業省による「省エネ最適化診断」だ。これは省エネのプロフェッショナルが実際に生産拠点に赴き診断を行い、特に費用のかからない運用改善を優先して提案するもの。

診断費用は1万450円から2万3100円と負担も少なく済む。診断の対象は中小企業基本法の定める中小企業者で、年間エネルギー使用量(原油換算値)が、原則として100kL以上1500kL未満の工場・ビル等(100kL未満でも、低圧電力、高圧電力もしくは特別高圧電力で受電している場合は可)となっている。

この省エネ最適化診断を受診した場合、設備更新の有効性が示されることから、省エネ設備導入補助金における加点評価の対象にもなる。

FEMSの適用範囲(〈一社〉日本電機工業会「FEMS導入の手引き」より)

(日本物流新聞 2022年12月10日号掲載)

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