工場環境向上のすすめ

少子高齢化の最前線をひた走る日本。中長期的な生産年齢人口の大幅減少が見込まれるなか、生産性と定着率向上につながる環境整備が企業活動における急務になっている。なかでも工場をはじめとした生産現場は慢性的な人手不足感が強いが、コロナ禍でいくぶん状況が和らいだ今こそ、工場環境の整備による定着率向上のチャンスだ。そこで直近の展示会などから、いま導入したい、現場の「カイゼン」につながる製品にスポットを当てた。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】労働災害防止:A-SAFE・コミー
【画像3】省力化:シュマルツ・をくだ屋技研・ミドリ安全
【画像4】環境衛生:日本ドナルドソン・淀川電機製作所・スイデン
【画像5】生産性向上:前田シェルサービス

労働災害防止

ワンランク上の衝突防止提案

折からのコロナ禍によって、人々の働き方は一変した。テレワークや業務の自動化などの取組みにより、自社の生産性を今一度見直す動きが増えた一方、現場から人が減ったことで事故を未然に防ぐ監視機能が弱まったとする意見もある。そしてそうした変化は今、労働災害の増加という形で顕在化しつつあるようだ。

厚生労働省の統計によると、2021年に発生した労働災害のうち、休業4日以上の死傷者数は前年比14.3%増の14万9918人。新型コロナウイルスのり患による労働災害を除いても前年比4.4%増の13万586人で、2001年以降で最多の件数をマークした。これはコロナ禍で、生産現場を巡回する人員の数が減ったことが一因と考えられる。そして感染症の流行が続く今だからこそ、企業にはこれまでよりも一歩踏み込んだ労災対策が求められる。

数ある労働災害のなかでも、フォークリフトによる衝突事故防止に注力するのがA-SAFEだ。同社が提案するのは、フォークリフトやトラックなどの車両に対応する衝突防止用のポリマー製ガードパイプ。6月22日から3日間、インテックス大阪で開催された「第3回関西物流展」で披露された。

独自開発の形状記憶ポリマーを用いた、A-SAFEのガードパイプ。しなることで車両の衝突による衝撃をうまく逃がす

従来の鉄製ガードパイプの場合、スピード次第では車両の衝突時にパイプを設置した地面ごとえぐれてしまい、衝撃を受け止めきれずにガードの内側にいる作業者と車両が衝突する危険性があったという。しかし同社のガードパイプは、独自開発の形状記憶ポリマーがしなることで地面に伝わる衝撃を5分の1に低減。トラックや大型フォークリフトの衝突をしっかりと受け止めつつ、衝突後は何事もなかったかのように元の形状に復帰できる。

その耐衝撃性は高く、最も耐久性が強いタイプでは車両10.6トン、時速10キロの衝突から作業者を保護できる。「日本での販売は18年からだが、安全を重視する大手企業での納入実績が増えている。ユニットを組めば高さ5.2mの柵の構築も可能で、フォークリフトと歩行者のエリア分け以外にも荷崩れ事故から歩行者を守ったり、高価な生産設備を保護するなど柔軟な使い方ができる」(同社)という。

一方、6月30日から3日間インテックス大阪で開かれた「2022大阪どてらい市」で、衝突防止用のユニークな鏡「FFミラー」を展示したのがコミーだ。特長は通常のミラーと比べて数倍という圧倒的に広い視野。正面から見ると65度、やや斜めから見ると75度の広範囲を視認でき、工場やオフィスでの衝突事故を未然に防ぐ。これだけの視野を持ちながら凸面でなく平面構造のため、設置時も異物感がない。「従来の凸面鏡は異物感があり、邪魔にならないよう目線よりも上に設置されることが多いが、それでは人が意識しないとミラーを見ない。FFミラーは平面鏡のため、人の目線と同じ高さに設置できる」(同社)とメリットを語った。

コミーの衝突防止ミラー「FFミラー」。通常のミラーと比べ映せる範囲が大きく異なるのがわかる

省力化

腰痛対策から自動化まで

生産現場の嫌われ者とも言える重量物搬送。腰痛防止など労災対策の観点からも対策は急務だが、足元では高齢者や女性など現場で活躍する人材も多用化しつつある。人手不足対策という点でも、こうした負担の大きい作業を楽にする設備は時流に即したものと言えるだろう。

第3回関西物流展でシュマルツが披露したのは、40kg可搬の移動式真空バランサー「ジャンボフレックスピッカー」だ。フォークリフトやパレットトラックに装着することで、通常のリフトにバランサー機能を付加。ハンドを得意とする同社らしく、先端を工具なしで様々なタイプに交換できるため、段ボールや袋体など幅広い形状のワークをハンドリングできる。単純に様々な場所でバランサーを使うという用途のほか、パレット上にバランサーを使って積み付けを行うことで、ピッキングのための往復回数を減らすことも可能だ。

シュマルツの移動式真空バランサー「ジャンボフレックスピッカー」。ハンドは様々なタイプに交換できる

一方、同じ関西物流展でをくだ屋技研が参考出品したのが、開発中のハンドリフト型AMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)。タナカエンジニアリングとLINXとの共同開発で、今年度のモニター販売、来年度以降のパッケージ販売を目指すという。「ターゲットは重量物搬送。1tまでの積載重量に対応し、現在パレットトラックを使った人手搬送を行っているユーザーに向けた提案を行う」(タナカエンジニアリング)。自律走行可能なAMRは物流センターなどで導入件数を飛躍的に増やしているが、こうした重量物搬送が可能なタイプの登場で、今後は生産現場における活躍も期待できそうだ。

をくだ屋技研がタナカエンジニアリング・LINXと共同出品したAMR。重量物搬送が可能で、生産現場での活躍に期待がかかる

関西物流展では腰痛対策に効果的なアシストウェアも展示された。ミドリ安全が出品した「ダーウィン ハコベルデ」がそうで、バッテリー非搭載のため総重量約800g(Lサイズ)と軽く、女性や高齢者も違和感なく使える。しゃがんだ際にゴムが伸び、立ち上がる際にゴムが縮むことで作業者の負担を軽減。運転やイスへの着席など、業務時の様々な動きを装着したまま行える手軽さもウリだ。無電力のためバッテリー稼働時間や場所を選ばずに使用可能で「バッテリー搭載タイプより安価のため売れ行きが好調」(同社)という。

ミドリ安全は幅広い種類のアシストウェアを披露

環境衛生

待ったなしの溶接ヒューム対策

2020年4月に公布された特定化学物質障害予防規則(特化則)の改正法。溶接ヒュームに含まれる塩基性酸化マンガンが神経機能障害などの健康障害を引き起こすことが明らかになったためで、2021年4月から全体換気や特殊健康診断の実施が義務付けられるようになった。

溶接ヒュームの濃度測定や、その結果を受けての換気風量の増加といった措置には2022年4月1日までの猶予期間が設けられていたが、今やその猶予期間も終了。すでに万全の対策を講じた事業者も多い反面、「中小規模の事業者では、現時点でまだ必要な措置を取っていない企業も多い」(環境機器メーカー)など、取組状況に差があるのが実情のようだ。ヒュームによる労働災害を防ぐためにも、事業者には迅速かつ確実な対策が求められる。

日本ドナルドソンのPT-700は、独自開発の高効率フィルタろ材による高い捕集効率を誇る

日本ドナルドソンがPRするのは移動式の小型ヒュームコレクター「PT-700」。大型集塵機にも搭載している独自開発の高効率フィルタろ材「難燃性ウルトラウェブ」を採用しており、捕集効率は99.9%(中位径2μm粒子において)を誇る。表面のファインファイバー層でダストを捕捉し内部へのダスト侵入を防ぐため、目詰まりの発生を抑えられるという。

これによりクリーニングの回数を削減しつつ、ダストのリリース性を向上。ボタン1つでフィルタ清掃ができるダスト払落し機構を採用するなど、メンテナンスの手間を削減している(別途エアコンプレッサ必要)。目詰まりを確認できる差圧計も搭載しており、小型機ながら機能性に富んだ製品だ。

淀川電機製作所のSET400A-SVは、フィルタを取り出すことなく付属のエアーガンを使ってメンテナンスできる

一方、ユーザーに向け、溶接ヒューム用集塵機を幅広く取り揃えるのが淀川電機製作所だ。大風量の据置型や省スペースの可搬型など用途に応じた機種を用意。2022大阪どてらい市でも、「非常に好評」という可搬式の「SET400A-SV」を提案した。

100V電源で稼働でき、キャスター付きのため作業場所を選ばず使用可能。メンテナンス方法に特徴があり、付属のエアーガンを差し込むことでフィルタを取り出すことなく清掃できる。エアブローで吹き飛ばされた塵は装置下部の引き出しに溜まる仕組みで、集めたヒュームの再飛散を防げるよう工夫された構造だ。

「後発メーカーとしての立場を活かし、特徴ある製品づくりを行った」。大阪どてらい市の会場で、スイデンの担当者はそう力を込めた。同社が紹介したのは移動式ヒュームコレクター「SFC-M600-1V」。「電源確保が容易な100V仕様にこだわって開発した」といい、アームが360度回転する構造のため広い範囲を集塵できる。「中小企業では特化則の改正がいまひとつ認識されていない場合も多く、需要は引き続き期待できる」(同社)と、拡販に意欲を見せた。

スイデンのSFC-M600-1Vはアームを360度回転できる

工場の環境改善に資する製品はヒュームコレクターだけではない。ケルヒャージャパンは大阪どてらい市で「セントラルバキュームシステム」を提案。「食品工場や粉塵が発生する環境などで好評を博している」と話した。

同製品は1台のバキュームクリーナーを設置し、必要な場所に配管でつなぐことで施設内の様々な場所から吸引できる。本体が1つのため回収物を1カ所に集めることが可能で、メンテナンスや管理工数を削減。労せずして施設全体をクリーンに保てる効率的な設備だ。

生産性向上

エアーの劣化による機械停止を防止

ここまで生産現場の労働環境を向上させる機器を中心に紹介してきたが、2022大阪どてらい市では工場の生産性を高める製品も出品されていた。ここではそうしたソリューションを少し紹介したい。

大阪どてらい市で前田シェルサービスがPRしたのは、新商品の圧縮空気用品質モニター「AIR-MO」だ。同社の高性能エアーフィルタ「3in1 マルチ・ドライフィルター」に対応しており、フィルタの二次側に装着して使用。不純物がフィルタの二次側に流入した際に赤色ランプを点灯させることで、エアーが原因で起こる工作機械の異常停止を未然に防ぐことが可能だ。

「多くの工作機械はISO8573-1の粒子等級3相当のエアー品質を要求している」と担当者は話す。それに対しAIR-MOは、その手前となる粒子等級2以下相当で赤色ランプを点灯。「本来目に見えないコンプレッサのエアー品質を見える化できるとあって、ユーザーの関心も高い」(担当者)と語った。

前田シェルサービスの「AIR-MO」は、フィルタの二次側に装着するだけで簡単にエアー品質をモニタリングできる

(日本物流新聞 2022年7月10日号掲載)

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