拡大する自動化需要〜ロボット関連ツール動向〜〈2〉

少子高齢化が懸念される日本にとって、ヒトの時間を最大限活用するうえでも、工程の見直しは避けられない。繰り返し作業に限らず、経験と勘が必要だった作業も、以前に比べてロボットへの代替が容易になった。搬送、接合、検査、バリ取り、研磨など、モノと数に最適なツールが増えたことは、自動化需要が拡大していることの証だろう。選択肢が広がった分、いかに用途に合ったツールを選ぶかが、自動化を定着させるうえでもポイントになる。そういった動きを踏まえて、ロボット関連ツールの提案動向を追った。

【画像1】(タイトル画像)
【画像2】アークの細かな変化を確認しながら、条件変更ができる
【画像3】ティーチペンダントには、初心者でも分かりやすい説明が表示される
【画像4】協働ロボット、多関節ロボットの実演にも力を入れる。オートリベットフィーダー(写真中央)のデザインも一新した
【画像5】昨年発売した動力一体型ヘッドユニット「ARU211M」。可動域の制約となっていた油圧ホースを不要にした

半自動溶接と同じ感覚で

協働ロボの利点生かす

搬送とともに、多関節ロボットが長年主戦場としている溶接は、自動車に代表される量産分野で活躍してきた。車体を挟むように複数台で溶接するイメージどおり、ロボットの導入には大規模な設備と広いスペースが必要だ。予算だけでなく、ライン変更、プログラム作成などの工数も考えれば、導入に中々踏み切れないのが現実だ。

そこでダイヘンはロボットを初めて導入する溶接現場向けに、協働ロボットシステム「Welbee Co-R」の販売を開始した。安全柵が不要な協働ロボットの利点を生かし、アークの細かな変化を近くで見ながら、半自動溶接とほぼ同じ感覚で条件変更ができるようにした。

導入のネックとなる教示作業は、アームを直接手でつかみ、動かして軌道を覚えさせる「ダイレクトティーチング」を活用。教示ハンドルにロック解除ボタンを設けることで、操作性を高め、細かな狙い位置の調整を可能にした。

溶接・接合事業部企画部の瀬戸口淳二課長は、「溶接品質を左右するトーチの角度を感覚的に設定できるので、半自動溶接に慣れている人にも扱いやすい。協働ロボットから半自動機にトーチを付け替えれば、使用状況に合わせて溶接電源を使い分けられる」と話す。

ロボットと半自動溶接のいいとこ取りはほかにもある。ダイヤルで電流と電圧を調整するモバイルリモコンだ。アークから目を離さずに変更できるため、条件設定の時間を縮められる。

瀬戸口課長は、「ベテランになるほど、アークを出しながら調整する方法に慣れている。半自動ならではの操作方法であり、条件変更しながらアークの変化が見られるので、技能伝授ツールとして応用できる」と自信を見せた。

初心者でも設定しやすく

溶接条件を設定する画面は、必要な機能を集約した。ティーチペンダントにある「Welbee Co-R」ボタンをクリックするだけで、溶接プログラムの基礎となる10個のコマンド(溶接開始指示、溶接開始・終了位置など)が表示され、初心者でも説明書なしでプログラムの作成ができるようにした。

システム構成の一つとして緻密な波形制御が可能な溶接電源「Welbeeシリーズ」が使用できるのもポイント。軟鋼、アルミ、ステンレスなど、材料に応じたモード選択で、欠陥のない美麗なビードに仕上げられる。薄板から厚板まで適用できることから、「板金加工部品から産業機械部品までさまざまな溶接現場の需要を見込んでいる」という。

セットアップのしやすさも特長に挙げる。接続キットに付属するPLCBOXをロボットの制御装置に取り付けた後、BOXと溶接電源をLANケーブルでつなげば完了する。

瀬戸口課長は「限られたスペースに設置できる分、初期費用を抑えられる」として、中小の溶接現場を中心に提案する考えを語った。

自動化含めた締結の最適化へ

負担軽減とポカヨケ防止

リベッティングに慣れた人でも、1日に打てるのは1000〜2000本。打ち続けていれば手首や腕への負担も相当なものだ。リベッターの軽量化と能力向上が進んでも、心身の負担を完全になくすことはできない。ロブテックスの提案は多関節ロボットも含めた締結の最適化。「自動化ありき」ではなく、作業頻度、現場環境、コストなどを総合的に判断して提案する取り組みだ。

商品企画チームの竹村和洋リーダーは、「短時間ならベテランの方が打つ方が断然早いし、ライン上ではエア、移動頻度が多い現場はコードレスと、リベッターのすみ分けはある程度されている。ただ長時間になれば話は変わる。身体的負担が増すだけでなく、打ち忘れなどのポカミスが発生する可能性も高くなるからだ」と指摘する。

ロブテックスは20年以上前から「オートリベッティングユニット」として自動化提案を展開。直交ロボット、専用機などで実績を重ねてきた。2010年以降、需要の高まりを受けて、メニューを拡大。多関節ロボットに組み込むヘッドユニット「ARU211M」のほか、協働ロボットに縦型エアリベッターを装着させたり、さらにポカヨケ防止機能を追加させたりしている。

ARU211Mを使った場合、最大で1日1万本は打てるそう。ブラインドリベットはフィーダーから自動供給する。昨年、ユニットの構造を見直して動力一体型に変更。「制御機器(PLC)をロボット側に委ねることで、ダイレクトに接続できる」(竹村氏)という。

さらに、可動域の制約となっていた油圧ホースを不要にし、ロボットに取り付けやすくした。販売にあたって、リベッティングの向きやスピード、リベットの供給ルートなど、周辺環境に応じてカスタマイズが必要な場合もあるという。

「システムインテグレータに納品して完結する商品ではない。打ち合わせから仕様決定まで時間はかかるものの、この手間こそ『ファスニングツールメーカーとしてこだわり』と考えている」

接合・締結市場にも

想定するユーザーは自動車産業に代表される組立ライン。リベッティングだけでなく、溶接などの金属接合・締結分野に間口を広げた展開も描く。

モノづくり事業本部の田邉浩樹副本部長は、「確かにリベッティングはニッチな分野。ただ工程改善という切り口で捉えれば、接合・締結市場に提案できる余地は十分にある。最近も産業機器の組立向けに、協働ロボットとの組み合わせで採用が決まった」と話す。

接着・接合EXPOやロボデックスなどの展示会にも出品し、「反響を得ている」という。田邉副本部長は「自動化は究極のカタチ」としながらも、「最善の手法とは限らない」と答えた。

「商談展示会ではエアリベッターがよく売れている。作業に慣れているということもあるし、生産ラインを変えられないのかもしれない。自動化、半自動化、手動の見極めは難しい。そういった意味でも『自動化ありき』ではなく、『リベッティングのことなら何でも相談してください』と伝えるようにしている」

拡大する自動化需要<了>

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